ミッちゃんのヒラヒラ大冒険

ニンテンドーDS逆転検事」の感想です。
あんまり引っ張ると、それだけちゃんとしたことを書かないといけなくなるような気がしたので、早めにまとめます。
基本的にネタバレなし(公式サイトレベルの情報はあり)なので、やや抽象的ですがご容赦ください。
それにしても、ゲームの話題久々すぎ。

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【総評】
点数88点(良作)
最近ほとんどゲームやってない状態で点数をつけるのは、ちょっとおこがましいと思ったが、やはり目安としてあったほうがわかりやすそうなので、敢えてつけた。


ちなみに、蒲田屋の評価は総じて甘めであることをお断りしておく。
(リリース順で)前作にあたる「逆転裁判4」の感想で(世間の評判を無視するように)76点をつけてしまっていたこともあって、相対評価という部分もある。


とはいえ、「そのジャンルが好きならお勧めできる」という評価であることは事実。
今回は「推理アドベンチャー」というジャンルになっているが、そのカテゴリーとして十分面白い物になっていると思う。
逆転裁判4」は趣が異なるので別にするとしても、「逆転裁判」シリーズ、特に 2、3 あたりが楽しめた人は、やっても後悔はしないだろう。


去年、内容についての情報がないときに、主人公が検事なので法廷パートはつまらなそうだ、というようなことを書いたが、実際には「捜査パート」と「対決パート」の構成であり、同じ心配をしている人には、心配無用と言っておきたい。

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【システム】
推理アドベンチャーとして正統進化を遂げた、とまで言うと大げさだが、過去シリーズの長所と短所を研究して、うまくいいところだけを煮詰めた感がある。


今回は、ロジックを積み上げて論理的に推理をすることにテーマが絞られているので、そういう内容のゲームや小説が好きな人は楽しくプレイできると思う。
要は、理屈っぽい人向け。


新システムである「ロジック」は、得た情報を組み合わせることで新しい仮説を導き出すシステムである。
これは、理詰めで相手を追い詰めるというゲーム全体の目的に、わかりやすい形で貢献している。
その上、プレイヤーの推理を主人公に伝えるという役割も果たしている。
これは推理ものやアドベンチャーゲームにおいては重要な要素だ。
この「ロジック」は、プレイヤーの推理と主人公の発言の間に、もう一手間プレイヤーの介入を要求している点で、推理の楽しみが増えていると言える。


また、今回から導入された三人称視点による移動画面も、それほどの違和感はない。
今まで、例えば移動先を「楽屋」「舞台」「客席」の中からコマンド選択して移動していたのが、キャラ操作で移動する形になったという程度のもので、本質的にあまり違いはない。
現場を調べるのも、2Dマップ上で行うことになるが、重要な部分はアップの 1枚絵になるし、感覚的には今までと変わらない。
確かに面倒さを感じることもあるが、それは以前のシステムでも同様であるし、ここで手がかりを見つけるのも推理の一部であって、ここを簡略化してしまうと安楽椅子探偵になってしまう。


それら新システムと、従来のシステムのいいところを組み合わせてある今作は、推理アドベンチャーとして、かなり洗練されたシステムになっていると思う。
パッと見、そんなに大層なものには見えないが、それこそが良くできたシステムであることを表しているような気がする。
正直、これに劣る形になってしまった「逆転裁判」シリーズは、今後は難しいのではないかと思うほどだ。

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【シナリオ・世界観】
ロジックパズルとしてシステムの完成度が高くなった副作用として、普遍的になったとも思う。
つまり、「逆転ワールド」専用のシステムではなくなったということだ。
例えば、「サイコ・ロック」や「みぬく」システムは一応は「逆転裁判」専用の概念である(同様の設定を作れば別の舞台でも可能だが)。
さらに、法廷でのやり取りもなくなっている。


そうなると、一般的な「私立探偵(刑事)もの」と変わらないことになり、最終的にはシナリオ勝負になる。
それはおそらく開発側も理解していて、この舞台、このメンバーでやる必然性もしっかりと織り込まれていると思う。
ここに手抜きが見られると、いつもの「続編である必然性がない」というセリフが出るのだが、今回はそこまで言う必要はないと思えたので、よくできていると言っていいのではないだろうか。
多少、キャラゲー的に、既存の設定をおいしく利用している感もあるにはあるが、そこはシリーズものの特権でもあるし、今作がシリーズ初プレイであっても十分楽しめるレベルなので許せる範囲だろう。


シナリオ自体もよく作り込まれていて、味わい深い。
ただし、フィクションの世界でフィクションのルールに基づいていることは忘れてはいけない。
現実世界のリアリティを持ち出して批判してはいけないということだ。
19歳の検事とか。

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【プレイ感・難度】
目立たないが、インターフェイスや操作感にも気を遣って調整しているようで、好印象だ。
ボタン入力を受け付けない瞬間が設定されていて、多少まだるっこしく感じる場面も時々あるが、おそらくは、連打による誤入力(による被ペナルティ)防止のためと思われる。


ゲーム全体のボリュームは意外とあり、プレイ時間はそれなりに長くなる。
とはいえ、これも計画的と思われるが、スピード感と重厚感が適度にミックスされていて、あっさり過ぎずかったるくなり過ぎずのところを押さえている。
ただ、終盤がダルくなりがちなのはシリーズ伝統というか、シナリオ上やむを得ないというか。


推理・謎解きに関しては、個人的には不満はほとんどなかった。
終盤は、数度ゲームオーバーになることもあって、これはちょっと難しくないか、と思うこともあったが、正解がわかれば納得はできるので、取り立てて文句をつけるほどではない。
終盤の緊張感を演出するにもこれぐらいの難しさは必要かもしれない。
そうは言っても、難しさは個人の感覚の問題なので、論理展開のパターンが違うプレイヤーには合わないこともあるだろうが、それはゲームの性質的にどうしようもない。
ミツルギの思考パターンに慣れよう、としか。


難度としては、シリーズ内では難しい方かもしれないが、不可解ではないと思うし、ヒントも十分に出る。
しかし、当然ながら、推理ゲームかつアドベンチャーゲームなので、何も考えずに適当に進めていればあっさり詰まる。
プレイヤーの推理を今まで以上に求めるシステムになっていることもあり、積極的に考えることが要求されている。
というか、そもそもそういうゲームなのだが。

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【その他・雑感】
全ての面において、過去シリーズの批判や欠点を分析・反省し、改善しようと努力した跡が見られる。
特に、将来にわたって破綻しないような調整に力を入れているように思えた。
システムしかりシナリオしかり世界観しかり。
単なるシリーズスピンオフのキャラゲーにしないために、かなりの作り込みをしている様子が感じられ、それは完成度の高さに貢献している。
こういった、「ちゃんと作った」ゲームは、好き嫌いは別としても、評価したい。


1つ残念なのは、現在の状況に関係のある証拠品を指摘するシーンがあるのだが、そこで「現場の状況とムジュンしているのは?」というシステムメッセージが出てしまうこと。
例えば、壁に弾痕があるので、そこを選択したのちに手持ちの「拳銃」という証拠品を選ぶというような順接を指摘するシーンである(こんな単純なシーンは実際にはない)。
直前にミツルギ本人は、「この場所‥‥あの証拠品と関係があるのか‥‥?」と言うものの、選択画面では「ムジュンを示そう」と言われてしまって、順接で示すのか逆接で示すのかわからず、やや混乱することが何度かあった。
選択画面が使い回しのサブシステムなのでやむを得ないとは思うが、もう少し配慮が欲しかった。


音楽についてはあまりこだわりがないので評価の対象外だが、相変わらず耳に残るメロディーばかりで、気付くとゲームを離れていても頭の中で鳴り響いている。
たぶん、一般的にはいい音楽という評価になるのだと思う。
つい、シリーズのサントラ欲しくなったほどだし。
どうでもいいが、追及シーンの BGM が、バリサクイメージと思われる低音パートがやたらにカッコ良くて好き。
また、毎シリーズ思うが、各キャラのモチーフでバリエーション作るのがうまい。

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以上、簡潔に書くつもりがいつものように長くなってしまった。
あまり期待しないでやったせいもあるかもしれないが、予想以上によくできていて楽しめた。
過去シリーズをやったことがなくても大丈夫だし、推理ゲームとして水準以上の完成度はあると思うので、このジャンルが好きな人なら落胆することはないと思う。