ワイルドアームズ ザ フィフスヴァンガード

ちょっと今さら感もあるが、「ワイルドアームズ ザ フィフスヴァンガード」のネタバレなし客観レビューを書いてみる。
他に主観レビューを書く予定だが、それらの違いはこの記事を参照のこと。

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まずは例によって結論から。
点数は 66点(普通)。
評価基準表にもある通り、可もなく不可もなしというところである。
全体を通して、HEXバトルによる戦闘は手応えがあるし、特に中盤あたりはストーリー的にも盛り上がりがあってなかなか面白いのだが、クリア後に何かが残るかというとそれほどでもない。
とはいえ、やるんじゃなかったというほど不満があるわけでもないので、文字通り「可もなく不可もなし」である。


全般的なシステムは基本的に前作「ワイルドアームズ ザ フォースデトネイター」を踏襲しているが、ブラッシュアップされており、進化を感じる
ただし、ユーザーインターフェイスが不親切で、細かい部分に配慮が行き届いていないなど「こなれてない」印象も受ける。
また、よく指摘されているが、ロード時間が長めであり、プレイ中結構気になる点は明記しておく(特に戦闘終了後)。


懸念していた HEXバトルは、再調整されバランスが良くなっている
トレードオフの関係にある戦略性とスピード感(テンポの良さ)をギリギリのところでまとめているが、その代償として、やや大味
ゲームにある程度慣れている人には手応えがあって面白いが、初心者にはちょっと難しいかもしれない。


ストーリーシンプルでわかりやすい。
よく、王道と評されているが、期待を裏切らないという意味においては確かにそうである。
ワイルドアームズでは珍しく恋愛要素が冒頭から強く出ているので新鮮ではあるが、シリーズのイメージとは違うと感じる人もいるかもしれない。
また、過去シリーズと比較するならば、脇役であることが多かったゴーレムがストーリーの中で大きく取り上げられている点も新鮮である。


一言で総括してしまうと、「気軽に遊べるお手軽RPGあたりだろうか。
プレイヤーキャラのレベルも上がりやすいし、ストーリー展開も素直でテンポが良い。
サブイベントや、やり込み要素は多いが、それらを気にせずに本編を進める分にはお手軽な作品と言えるだろう。
ただし、その分あっさり風味である。
人によっては物足りないかもしれない。


そのせいか、低年齢層向けであるという感想をよく目にするが、共感するところはある。
ただ、それにしては謎解きや戦闘が難しいかな、という気もする。


以下、各要素について細かく感想を述べてみたい。
記事が長くなるので、別のページとする。




【全般的なシステムについて】
ロード時間とインターフェイスについては先に述べた通りである。
ロード時間については、ダンジョンでの戦闘後もやや遅いが、特にアウトフィールドでの戦闘後の読み込みが遅い。
戦闘画面とフィールド画面の遷移がスムーズでないと、それだけでストレスとなる。


個人的には、今回の戦闘後のロード時間はギリギリアウト
残念ながら、許容範囲を超えている。
普通に進めていてストレスを感じてしまう。
また、アウトフィールド間の移動でロードが発生することもよくあるが、これも頻繁に移動する際にはかなりイライラさせられる。


インターフェイスについては、やや意味合いが違うが、三人称視点のカメラ位置も気になった。
かなりキャラクターに近い位置にカメラがあるせいで、あまり遠くまで見渡せない。
これを、「キャラクターに近い目線で世界を見ることができるようになった」と評する向きもあるが、個人的には不便の方を強く感じた。


アクションゲームでもないのに、「3D酔いする」とか「気分が悪くなる」という感想がときどきあるのも、カメラリセット機能がないことと合わせて、視野が狭いために、度々カメラを上下左右に振らないといけないせいだろう。


また、触れていない話題としては、パートボイス仕様であるということ。
一見、フルボイスのような印象を持ってしまうが、ボイスは主に戦闘用。
一部イベントではちゃんとしゃべるが、それ以外の多くのイベントでは、バンクのボイスの使い回しである。


それから、個人的に不満を持ったのは、セーブについてである。
1ギミルコインがなくなり、セーブポイントでしかセーブができないので、自分のペースでゲームを進めることができない
つまり、「もうやめたいのにセーブできないからやめられない」という状況がよく発生した。
実際には、アウトフィールドにもダンジョンにも、かなりの数のセーブポイントがあるのだが、とは言え いつでもどこでもというわけにはいかず、特に、初めて入ったダンジョンではどこで区切りがつくのかわからずに困ることが多かった。


他には、アウトフィールドにおいて、乗り物での移動をすることがあるが、それらの操作が妙にやりにくいというのもかなり気になった。
似たような点で、ダンジョン内でのガンアクションも、微妙にやりにくい。
変なところでリアリティにこだわってしまっているのか、それとも前述のユーザーインターフェイスへの無頓着からか。


なんだか不満ばかりになってしまったが、気になった点として挙げてみた。
人によっては気にならないような細かいことかもしれないし、それは大体においては及第点であることの裏返しだと考えてもらいたい。

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【戦闘について】
戦略性とスピード感の両立を目指したバランス調整はなかなか良い。
ただし、何も考えずに戦うと雑魚相手でもあっさり全滅する。
初心者は、コツを掴むまで苦労するかもしれない。


そのあたりが大味と感じる理由である。
適正なレベル帯(むしろ蒲田屋は、少し余裕を持ってから挑むスタイル)で挑んでいるのに、雑魚の通常攻撃一撃で HP の三分の一から半分は持って行かれるような戦闘がラストまで続くような印象だ。
だから闇雲に突っ込んでばかりではすぐに全滅で、戦略を考える必要性が出てくるし、雑魚戦でも緊張感があって面白いのだが、個人的にはやや大味に過ぎるような感想を持った。


ちなみに、戦闘が終わると無条件に HP は全回復する(VITゲージはない)。
今回も MP制が導入されているが、MP は回復しない(ダンジョン中に小回復アイテムがときどきある)。
MP は普通だが、HP が毎回全回復というのは、大味ぶりを象徴しているような気がする。


その戦略性の高い HEXバトルの真髄は「陣取り」である。
射程、レイポイント(属性)、HEX単位の扱いなどの要素を活かすために、究極的には移動と陣取りが一番のポイントとなる。


ここで HEX単位の扱い、とは、攻撃や状態異常がキャラ単位ではなく HEX単位で扱われることを意味する。
つまり、同じ HEX に 3人が固まっていれば、敵からの 1回の攻撃で全員がダメージを受けてしまうし、その HEX が毒になれば全員が毒の影響を受ける。
しかし、毒は HEX に対しての状態異常であるから、その HEX から出てしまえば何の影響もない。もちろん、アイテムなどで異常を回復することもできる。


当然だが、プラスステータスの効果も HEX単位である。
例えば、味方に有利になる「クイック」をかけても、その HEX に敵が入ってしまえば、敵に有利に働いてしまう。
また、HP 回復スキルやアイテムも、味方全員が同じ HEX にいるときに使えば、1度で全員回復できる。
そのため、味方が固まるべきか散らばるべきかなど、戦術的に考えることは多い。


属性についても同様で、例えば風の性質を持つ敵は地属性が弱点であることが多いため、地のレイポイントからの魔法攻撃が有効である。
しかし、風の性質を持つ敵は風の魔法を使ってくることがある。
地のレイポイントにいるときに反属性の風の魔法を受けると、被ダメージが 1.5倍になるため、リスクも負うことになる。
こういったジレンマをうまくやりくりするのも戦術を考える楽しみである。


しかし、作業的にならずに、戦闘の度にいろいろ考えて行動する必要がある点が HEXバトルの面白さなのだが、そのせいで弊害がなくもない
ダンジョンを攻略していて、「次はあそこへ行って、これをやってから、その後こっちへ行ってあれを試してみよう」などと目的を持って移動している最中に戦闘に入ると、戦闘に勝つためにまた別のロジックで頭を使わなくてはならない。


そのため、戦闘が終わった後、次に何をしようとしていたのかをすっかり忘れていることがある。
蒲田屋の生体メモリが戦闘サブルーチンに移行した時点で処理能力を超えていることが原因なのだが、現在地表示がややわかりにくいことと合わせて、同時にいろいろ考えないといけないのは煩雑さを感じる一因かもしれない。


このように、HEXバトルそのもののバランスは良くなっているが、やはり一長一短という感じである。
後はもう個人の好みの問題だろう。

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【ボリューム・難度について】
本編自体のボリュームはそれほどない
しかし、サブイベントや やり込み要素が充実しているため、それらを全てこなそうとすると、かなり長い間楽しめる。


ただし、シリーズ 10周年記念作だからか、サブイベント多くは過去作品ネタで占められている(他にも過去作品絡みの小ネタはあちこちにちりばめられている)。
よって、過去作品を知らない人には、あまり面白くないと感じるかもしれない。
蒲田屋は、シリーズ全て経験しているので、細かいネタにも大笑いさせてもらったが、それでもどこか、同人の二次創作モノっぽい印象が拭えなかった。
知らない人には、ただの内輪ウケに見えてしまうかもしれない。


また、お使い系のイベントも多く、ボリュームの水増しと取られても仕方ない面も否定できない。
もちろん、サブイベントであるから、別にやらなくても何の問題もないが、町で誰かに話しかけると依頼されたりするので、どうしても意識してしまう。
このサブイベントのせいで、本編の流れが阻害されるという意見もよく目にする。
逆に、長く楽しめるので歓迎だ、という意見もあり、ここは個人の価値観で判断してもらいたいところ。
ちなみに、サブイベント(やり込み要素)はそのゲームの本質ではないという観点から、66点という点数の中にはそれらの評価は入っていない。


難度については、過去作品に比べ、やや難しいと言えるかもしれない。
戦闘についてはすでに述べたとおり。
その他、ダンジョンの仕掛けや謎解きに、いくつか難しいものがあった。
特に、リドルのセンスには正直疑問を持ってしまった。
正解がわかってからも、今一つ納得できなかったりするリドルはいかがなものか。
ただ、これは作った人との相性のようなものがあるので一概には言えないとも思うが、少なくとも難しいものがあるのは事実である。


また、アクション周りの操作感が悪いのを逆手に取った仕掛けもあり、こういうのには「らしくない」意地悪さを感じた。
このあたり、過去のシリーズとは違うスタッフが作っていることを実感するポイントであるが、詳しくは別のレビューで述べたい。


【その他の要素について】
音楽・グラフィックスについては特に触れていないが、これもゲームの本質ではないと考えているために、評価の中心からは外しているからである。
シリーズファンにとっては、音楽は大いに興味がある点だと思うが、個人的にはそれほど悪くない印象だった。


当然、なるけ節とは異なるが、気が付けば口ずさんでいたり口笛吹いていたりしたので、これはこれで良かった。
ときどきエレキなロックがあったのは違和感もあったが、全体的には雰囲気出ていたように思う。
通常戦闘時の BGM など、カスタネットが鳴るとノリはいいのだが、フラメンコ風になってしまうのは西部劇っぽくないのでは? とも思ったが、そもそもワイルドアームズの西部劇はマカロニ・ウェスタンなので、これはこれでアリだろう。


グラフィックスは、正直あまりこだわりがないので、触れないでおく。
そもそもこだわりがないので、客観的に評価できる基準が自分にない。
主観的に見ると、質については別に望まないので十分。
ただ、イベントシーンで同じモーションの使い回しが目立つな、というのは感じた。

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以上のように、詳しく見ていくと不満点が多いような印象を受けるかもしれないが、本編のみを評価対象として考えても、ゲームとしてそれなりに楽しめる作品であると言える。
大作PRG とまでは言えないが、単体作品として気軽に遊ぶには良いのではないだろうか。