社会の世相から

つづきー。
ていうか、1日おいたら、なんでこんなこと真面目に語ってるんだと我に返ってしまった。


それはともかく、法にそれほどの力がない日本では、フリーランスというのはかくもか弱き立場なわけです。
規模の大小はさておき、中小企業も似たようなものかもしれませんが。
ただ、フリーの場合は法人格がないぶん、発注者側が商業取引をしている自覚を持ちにくい可能性はあると思います。


そんな思いでいたところ、とあるビジネス系のサイトで「価格決定権を取り戻すことが自分のビジネスを持つこと」、「自分の価格で仕事を受けなければ儲からない」という意見を見かけました。
まったくその通りです。


前者に関して言えば、価格決定権のないフリーランスはフリーターより不安定です。
というより、ビジネスの主体ではありません。
商業的な主張のできる事業者ではなくて、会社の言うことを一方的に受け入れるしかない被雇用者をフリーでやっているということです*1


実際には、フリーターより縛りの少ない超単発型のアルバイトぐらいのイメージです。
なんせ、案件単位の発注ですから。
なんとなれば、1回だけ発注して、その後なんの連絡もなしに縁を切ることもできます。
小規模でかつ継続性が高い業種の場合にそうなるのは、フリーランス側にも問題があることが多いのですが、たくさんのフリーを抱えている会社の場合、相手側に気が回らなくて結果的にドライな扱いになることもよくあります*2


フリー側に価格決定権があれば、別にそれでもいいというか、それはフリー側の問題として受け止められるぶん、ある程度の納得感があります。
仮に格安料金で 2倍のクオリティの仕事を納期前に納品したのに切られたとしても、自分で決めたことが多い分、反省の要素はこちら側にもたくさんあるからです。
しかし、何から何まで相手側に握られて、バクチに乗るか乗らないかだけが自分の判断では、どんなに前向きに捉えようとしても、どうしても不条理感が残ります。


また、価格決定権がある場合、継続性が高くない業種では(単発であることを織り込んで)1案件の料金が高くなりがちですが、発注者側や世の中的には暴利だと思われたりします。
このへんはいろいろ状況によって違うので一概には言えないと思いますが、とりあえずサラリーマンの給料(しかも手取り)と比較するのはやめてほしいと思います。


その暴利うんぬんの利益の話は、後者の部分です。
別に大儲けをしようとか、ビジネスを拡大させようとか、そんなつもりはないとしても、仕事がペイするかどうか、つまり採算が合うかどうかは大きな問題です。


「割に合わない」と言うと、なんだか個人的なグチに聞こえますが、実は事業の継続性に影響する重大な問題です。
だから、本音を言えば採算が取れる範囲で仕事をしたいわけですが、それを手抜きだとか楽をしていると感じる人達もたくさんいます。
というか、大部分の人がそうです。
仕事を出す側も、する側も、第三者も。
仕入という目に見える費用構造がないと、事業者のコストを想像できない人が多いようです*3


実際、費用なんてかかってないじゃないかと思うかもしれませんが、そうではありません。
まったく経費がかからない商売などはないし、そもそも、働ける人の 1時間は少なくとも最低賃金ぶんの価値があります。
東京都で言えば 850円です。
つまり、1日 6,800円です(当然、1日8時間労働の計算。それを超えれば割増)。
3日なら 20,400円です。


仮に、3日間の作業期間で 20,000円の仕事があったら、普通に 8時間労働を 3日したら赤字と言えるわけです*4
価格決定権がなければ、作業時間を減らす方向でしか調整ができません。
そこがスキルの見せ所で、差を付けるところなのは間違いありませんが、限界があります。
限界を超えると、この事業を継続することができなくなります。


この不況下で、慢性的に(フリーを含む)人材が不足している業界がありますが、つまりこれが原因だと思います。
誰にでもできるような単純な仕事でなければないほど、スキルに見合ったリターンがなければ人材が増えることはありません。
というか、減る一方です。


料金安くて嫌なら辞めてコンビニでアルバイトでもしろ、なんて言う発注者がいるかどうかわかりませんが、結果的にそうしないと食っていけない人が多いから人手不足になるんだと思います。
人材不足、ひいては業界の体力不足の原因は、使う側の人材軽視から来ているような気がします。


……なんだかまた、長くなってしまった上にまとまりつかなくなってきた。
日頃の個人的な不満がまとめて出てきたような感があるが、こういう方向性の問題が世の中を覆っているような気もする今日この頃。


個人的に、フリーランスっぽい立場にいるので、フリーの観点からの意見だったけど、労使問題も含めた日本の商業社会の理不尽さは日本経済の衰退をガッチリ支えてると思うますですよ。
法の及ばない世界を改善するのに、法のパッチでは効果ないんじゃないかな、みたいな結論にしたかった前回と合わせて、とりあえず、社会派気取りなことが書けたような気がするので、自己満足して終わることにする。


ただの暴露話だった感がなきにしもあらずだが。

*1:それでもサラリーマンだってアルバイトだって雇用契約があった上で雇用されるわけだが。

*2:正直、そういうのは人材管理ができていないと思う。自分に都合のいいところだけ「ビジネスライク」を主張するのはずるい。

*3:無意識に「仕事は常に全身全霊で全力投球でなければならない」という思い込みをしている人が多いのもある。採算度外視でも限界までやり切る仕事が美しいとか。あと、そもそもコスト意識がない人も多い。

*4:作業物の授受のための移動や打ち合わせなどでも 1時間かかったら、当然それも 850円のコストである。