Multiplay

たびたび吹奏楽ネタで恐縮だが、YouTube のせいなのでご容赦いただきたい。
もう、うっかり聴き始めると止まらない。
ついでに思い出も止まらない。


さて、世の中には業界用語的に「その世界での慣用表現」というものがあります。
もちろん音楽界にもいろいろあるわけですが、ジャンルによって細分化されている言葉もあります。


例えば、吹奏楽界では大多数の人は「演奏する」=「吹く」と表現します(一部パート*1を除く)。
吹奏楽器が多いので当然ですね。


それに対し、オーケストラの多数の人は「演奏する」=「弾く」と表現します。
これは弦楽器奏者の感覚です。
管楽器奏者はやっぱり「吹く」だと思います。


まったく余談ですが、以前、クラリネット奏者が出てくる小説を読んだことがあります。
1巻では「クラリネットを弾く」と表現されていましたが、2巻以降は「クラリネットを吹く」になっていました。
指摘あったんでしょうか。
こういうところ、難しいですね。


それから意外と、オケやバンドで演奏している当人は、区別する必要がない場合は、楽器の名前をあまり呼びません。
総称の「楽器」と言います。


だから、「俺のトランペット見なかった?」というセリフは今一つリアリティに欠けるような気がします。
ここは「俺の楽器見なかった?」と言う方がそれっぽくなります。
蒲田屋個人の経験に基づく感覚なので、一般論ではない可能性がありますが。


区別する必要がある場合というのは、例えば、「私、次の曲ピッコロだから」(本職はフルートだけど次の曲はピッコロに持ち替える)というような場合。


そんな習慣があるので、会話の中で楽器経験者が、「昔楽器吹いてたんだけど」と言えば管楽器奏者だとわかります。
「楽器弾いてたことあるので」と言えば弦楽器奏者(ピアノ含む)。
打楽器奏者は……「前にちょっと叩いてたから」とか?
まあ、みんなひっくるめて「やってたんだけど」で終わっちゃうことも多いような気もしますが、でも、自然にポロッと出ちゃうもんです。意外と。


特に現役の人は間違いなく出ます。というか、それが普通なので。
だから、弦の人とブラス*2の人が話していて、「この曲吹いたことあるよ」とブラスの人が何気なく言うと、弦の人は表現の違和感で「ああ、この人はブラスの人だっけ」と思い出すわけです。
逆もまたしかりです。


おまけで言うと、指揮者の場合は「この曲振ったことある」になります。
名詞形(パート名)は「棒」です。
そのくせ素手で振る人もいます。
いや、いいんだけど。


指揮者はともかく、同じく楽器を演奏するという表現なのにずいぶんいろいろあるんだな、と思うわけですよ。
英語で言えば、みんな play で片付くはずなのに。
日本語って難しいけど、表現豊かですよね。


とか、そんなきれいにまとめるつもりはさらさらなくて、ホントはもっとどうしようもないネタのはずだったのに、書いてるうちに収拾つかなくなったので、今日はこの辺にしといたるわっ。

*1:打楽器とかコントラバスとか。ちなみにピアノは打楽器(かつ弦楽器)。

*2:本来は金管(brass)楽器だが、慣習的に管楽器全般を指す。正確さを期して管楽器(wind)をウィンド、ウィンズと表現することもある(ウィンドオーケストラなど)が、それ以外ではあまり使われない。元木管楽器奏者としては寂しい限り、と言いたいところだが、個人的にも馴染みのない言葉なのでそんなにこだわりはない。