脳内麻薬中毒

以前、ちらっと書いた、「運動経験がない人がジムなんかで運動を始めると、すぐに嫌になってやめるタイプと、異常にハマってエクササイズ中毒になるタイプに二極化する傾向がある」と分析していた知り合いの話を少し詳しく書いてみる。


その知り合いは、マルチリンガルのスキルを活かしてソフトウェア会社で翻訳の仕事をしている。
その会社は大きなオフィスビルに入っているのだが、同じビル内にフィットネスジムもあって、会社が福利厚生の一環で団体契約しているため、社員は自由に利用できるらしい。
しかも、就業中でも。
すごいな。


知り合い本人は、過去にテニスをやっていて、今はゴルフにホットヨガとスポーツ大好きなので積極的にジムを利用しているのだが、開発系 IT会社のステレオタイプ的イメージ通り、周囲のエンジニアにはそんなスポーツ好きはほとんどいない。
しかし、彼らも健康維持(と契約施設の積極利用)を理由に上司から半ば強制的に通わされるらしい。


そういう人が渋々とジムで運動を始めた後にどうなるか、を観察・分析したのが冒頭の意見だ。


今まで運動嫌いで経験もほとんどなし。体力も筋力も当然ないような人が多いわけだが、直感的な予想通りに、実際にやってみても面白みを感じられずにやめる人がいる一方で、やってみたら意外に楽しくてハマるどころか、やめられなくなって中毒状態に陥るほどの人も同程度いるらしい。


やめる方は想像しやすいので説明するまでもないが、ハマる方が中毒症状を呈するに至るまでの過程が大変に愉快かつ納得できるものだったので紹介しようと思ってネタにした。
知り合いによると、こうだ。


まず、マシントレーニングなどではなく、インストラクターと一緒に踊るエアロビクスのクラスを取るのが基本*1
参加するのは、運動経験もなく、モチベーションもなく、体力も運動能力も体形にも自信のないひ弱なエンジニア君。
ゆるい長袖 Tシャツを着て、恥ずかしそうに隅っこでこそこそと参加している。
しかし、やってみると意外とリフレッシュできて気分がいい。
そこで定期的に参加するようになる。


すると、体が動くようになってくる。
体形もだんだん締まってくる。
Tシャツはぴったりめの七分袖になっている。


まったくの未経験者にとって最初の上達曲線は大きい。
やればやるほど上手になるし、楽しくなる。
そしてシェイプアップも進んでいく。
いつの間にかピチピチの半袖 Tシャツを着て踊っている。


エアロビクスにもいろいろあって、初心者向けのソフトなものからトレーニング要素を含んだハードなものまであるらしい。
経験値が上がると、当然ソフトなクラスでは物足りなくなり、ハードなクラスに参加するようになる。
すると、シェイプアップした体に筋肉がつき始め、なかなかのボディに変貌し始める。
気がつくと、服装は露出度の高いタンクトップになっている。


最初の渋々感はどこへやら、積極的にインストラクターとコミュニケーションし、ダンスの振り付けや使用曲を一緒に考えたりし始める。
レーニング要素があるので、要所要所で決めポーズやかけ声があるのだが、もうノリノリで「ハッ!」とか「ヤーッ!」とか叫びつつバッチリ決める。
しまいには、体にオイルを塗り始める。


知り合い曰く、さすがにここまで来るとちょっと引く、とのことだが、まあ、ハマっちゃう人の気持ちもわからないでもない。
蒲田屋も似たようなもので、軽い気持ちで始めたテニスが異常に楽しくて今日まで続けているし、気付いたらラケットが 4本もある。
それ以前に、減量の経験があるので、やったことの結果が目に見えることの快感はとてもよくわかるし、それが病みつきになるのも経験済みだ。
今まで鍛えた経験がない分、ちょっと使い始めると見る見るうちに筋肉がついてきて、「おおっ、俺にも筋肉あるじゃん!」という驚きと喜びもある。


ハマるって、そりゃ。
前にも書いたけど、そもそも運動するとドーパミン出るっていうのは科学的に確認されているし。
もちろん、度が過ぎたら逆効果だけど、やっぱり健康にいい影響があるのは間違いないので、エクササイズ中毒と言われようが、楽しく続けられるうちはやった方がいいと思う。
引かれない程度に。

*1:詳しく聞いていないので事実はわからないが、就業時間中の気分転換だから、筋トレよりはエアロビの方が理に適っている。鍛えるのではなくて健康維持なら、やっぱり有酸素運動。それに、経験やモチベーションのない人に自発的なトレーニングは難しく、インストラクターの指示と音楽に合わせて強制的に進行する運動の方が向いているのだと思う。