ショーダウンだ
NintendoDS 用ゲームソフト「逆転裁判4」の感想を書いてみます。
蒲田屋にしては珍しく割とタイムリーなタイトルの感想だと思います (^^;
ネタバレはしませんが、前提知識や先入観が全くない状態からやりたい人は読まない方がいいです。
ネタバレの基準は、公式サイトで得られる情報か否か、あたりです(絶対的ではありません)。
ゲーム評価基準はこちら。
基準表は、リンク先の最下段です。
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いつものように、点数と結論から。
点数は、76点(佳作)。
これは、過去の作品を全てやっている前提の点数だが、シリーズ未経験者でも同程度だと思うので、敢えて個別評価はしない。
おそらく、過去作品の経験者からは、違和感のある点数だろうと思う。
世間的には、あまり評判が良くないのを見ればそれも納得できる。
しかし、蒲田屋としては(確かにいろいろと引っかかりはするが)それなりに評価しても良いと思うので、この点数とした。
詳しくは後述する。
総合的な感想としては、「面白いが、やや物足りない」というところ。
ストーリーやトリックに関しては、よく練られていて味わい深いのだが、過去作品に比べると全体的に「丸くなっている」感じがしてしまう。
大胆な「ぶっとび感」がないせいである。良く言えば、落ち着いている。
その理由を一言で言えば、「世間の目を気にして」ということだろう(後述)。
特に、過去作品の経験者には顕著に感じられるだけに、過去作品を先にプレイしておくことを勧める立場としては悩ましい。
なぜ、過去作品のプレイを勧めるのかは後述。
その理由の 1つでもあるのだが、本格推理ものとか、本格法廷シミュレーションだなどと思ってやるべきゲームではなく、もっと軽いノリの私立探偵ものだと理解した上でやれば、十分に面白いと思う。
過去作品に対する批判や、根本的な問題点に向き合っている点で評価できるが、やはり試行錯誤の途中という印象はある。
多くの人が指摘するように、次回作の内容で今後の運命が決まるだろう。
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●過去作品をプレイしておくべき理由
「逆転裁判」の世界観とノリを理解するためである。
つまり、ある種のお約束をお約束と認識できるようになるための練習。
ストーリー的なつながりは重要ではない。
過去のシリーズは 3 で完結しており、4 からは別の時代の話である。
法廷バトルだとか、弁護士だとか、法律だとかが出てくるので、リアリティを感じてしまうのは無理もないが、本質的にファンタジーであるということをまず理解しなくては、このシリーズは楽しめない。
この世界の法律は、デスノートのルールと同じである。
つまり、物語を構成するための設定であり、架空の世界の中の架空のルールである。
理屈ではなく、すでに決まっているルールであり、このルールの中でパズルを解くのが目的なのだ。
これを理解せず、現実世界の法律や法曹ルールを持ち出して批判する人が後を絶たないが、正直なところ、ナンセンスというより野暮であると言わざるを得ない。
いや、確かに蒲田屋も 1作目や 2作目あたりではそんなツッコミをした記憶もあるので、他人を責めてばかりもいられないのではあるが。
だから、このゲームをやって、現実の法律がそうなのだと思ってはいけないし、法律の知識のある人は、その知識はプレイ中は忘れなければならない。
この点を許容できるかどうかが、シリーズを楽しめるかどうかの 1つのポイントなのだが、本職の弁護士を CM に起用するなど、あくまでも「法律を扱った裁判もの」としてプロモーションしたい営業サイドの姿勢は、個人的には危険だと思う。
言わなければ十分面白いのに、「本格推理もの」を謳ってしまったばかりに、一部から反感を買ってしまったノベルゲームの例を思い出し、少し複雑な気分になった。
また、以前の記事の繰り返しになるが、「逆転裁判3」はやっておくべきである。
DS版が出ていないので、これをやらずに、1(「蘇る逆転」)、2、4 とやってしまう人が多いようだが、3 こそやっておくべき作品だと思う。
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●逆転裁判シリーズの魅力と欠点
少し話題が逸れるが、現実の法律を忘れてプレイすべきであることを書いたので、ついでに「逆転裁判」シリーズの魅力と欠点について触れてみたい。
一言でまとめると、「法律」や「法廷」をテーマにしている点が魅力であり欠点である。
魅力は、言うまでもなく、ロジックを駆使して相手を論破するという、推理ものとして新しいゲームシステムを生み出したこと。
欠点は、法律や法廷を持ち出してしまったために、リアリティという縛りから逃れられなくなったこと。
実は欠点はかなり致命的である。
だから、(法律に縛られる)法廷ではなく、討論やディベート形式だったり、私立探偵の犯人当ての場面のような、法律に縛られない、ロジックのみが重視されるシチュエーションにおいて「逆転裁判」のシステムが使われると、非常にマッチするのである。
そういったパロディやオマージュ(というか二次創作)作品の方が、ロジックパズルとしては しっくりとくるというのは、ちょっと皮肉な気もする。
しかし、それは「逆転裁判」シリーズの魅力のみをうまく抽出した結果であり、ある意味理想型とも言える。
それに対して、オリジナルは、時には法律を利用し、時には法律に縛られ、毎回苦労している姿が窺える。
実際のところ、無実の被告人を弁護するというのは付随的な目的に過ぎず、結局は真犯人を見つけ出すのが目的のゲームである。
無罪判決はむしろ目的ではなく結果であるとも言える。
そもそも、弁護士が捜査してしまう時点でリアリティは完全に崩壊しているのだから、本職がたまたま弁護士である私立探偵が弁護のついでに真犯人も見つけてしまう、というファンタジーの物語であることを理解することが、シリーズの魅力を理解する第一歩である。
もちろん、欠点に目をつぶる寛容さも必要だが。
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●「逆転裁判4」の作風
話を「逆転裁判4」に戻そう。
今回の作風についてである。
苦悩の跡が随所に見られる。
過去作品の反省、自虐、開き直りが散見されるが、最終的にそれらをなんとかまとめて、良い方向に開き直ったように思えるので、個人的には良しとしたい。
具体例はネタバレが避けられないので控えるが、上述の「欠点」を、新章スタートを機にある程度繕い、ある程度開き直り、整理したと感じられた。
これが次回作にどう活かされるのかが注目される。
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全体的なノリのおとなしさは、前述の通り、「ぶっとび感」に欠けるせいだと思うが、この原因はいくつか考えられる。
1つは、やはり「法律」の縛りである。
シリーズが有名になり、プロモーションも大きくなり、プラットフォームである NintendoDS の普及率を考えると、仮にも法律や裁判を扱っている以上、あまりにも荒唐無稽な展開を堂々と披露するわけにはいかなかっただろう、という想像ができる。
裁判をテーマにしておきながら、あまり無茶なことをすると、そちらの方面からクレームがつく恐れもある。
その他に、かなり嫌味な見方だと思うが、「社会派のゲームなんですよ」というのをアピールしようとしているフシがあるように感じる。
総監督の巧舟氏のインタビューによると、ゲーム内容に関して、会社の上の方からそれなりのプレッシャーがあったようである。
ただし、落ち着いているとも表現できると書いたように、その分、シナリオが練られているとも言える。
確かに、ちょっと無理があったり、スッキリしない部分もあるが、そこはそれ、シリーズ伝統ということで大目に見るのが粋というものではなかろうか。
探偵パートは適当にやっても、必要な物を入手し損ねることはないので、さっさと済ましてしまいがちだが、ここでの会話の一言一言が意外と味わい深いので、そこを飛ばしてしまうのはもったいないと個人的には思う。
下手なノベル系のゲームより、よっぽど練られていて(いろいろな意味で)奥深い発言が多く面白いのだが。
もちろん、法廷パートも同様。
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また、謎解きに関して言えば、それほど難しくない。
全年齢対象を意識したのか、ロジックパズルの部分は大体わかりやすい。
ヒントも多く出るが、推理ものに多少慣れた人なら、ヒントがなくても考えれば解が導ける謎が多い。
問題は、新要素である「みぬく」システムである。
個人的には、それほど難しくなかったのだが、人によってはかなりハマる可能性もあるのではないかと感じた。
法廷での尋問や、過去作品におけるサイコ・ロックのように、証拠品や人物ファイルを提示して理詰めで追い詰めるのとは違い、相手のしぐさにツッコミを入れて、「今のウソだよね?」みたいな、ある種、ロジックとはかけ離れた追及の仕方に、推理ものとして邪道だと感じる人もいるかもしれない。
逆に言えば、適当にそれっぽいものを突きつけていれば何とかなった今までとは違い、まったくの手詰まりで先へ進めないシチュエーションが発生することになるのである。
しかし、蒲田屋は、これはロジックパズルから逸脱したシステムではなく、むしろプレイヤー自身の推理力を求めているのだと思う。
なぜなら、「みぬく」能力を使う相手の証言全体をまず吟味しなくてはならないし、その証言内のどの部分がウソであるかも推測しなければ見つけられないからである。
まったく見当もつかない状態で怪しいしぐさを見つけるのは至難である。
つまり、公式のアピールとは逆で、「相手のしぐさがおかしいのを見つけて矛盾を発見」するのではなく、プレイヤー自身の推理によって「発見した矛盾発言のときに相手のしぐさがおかしいことを見つける」システムなのである。
言い換えれば、プレイヤーの気付きを主人公に教えるためのシステムと言える。
過去に、同じ事を別のゲームの感想でも言った。
自転車創業の「そう、あたしたちはこんなにも理不尽な世界に生きているのだらよ(以下「だらよ」)」の感想でである。
繰り返しになるが、推理もののゲームでは、登場人物がプレイヤーより先に謎やトリックに気付いてしまうことが多々ある。
謎やトリックが、そんな成り行きで解決してしまっては面白みが激減するので、プレイヤー自身が謎を解き明かし、それを主人公に伝えるためのシステムとして、「だらよ」の ANOS システムを評価した。
今作の「みぬく」システムはこれと同じ目的で導入されていると言ってよいと思う。
そう考えれば、過去作品よりも、プレイヤーの積極的な推理を要請しており、推理ものとして邪道どころか、本質的な楽しみを提供していると考えられる。
個人的には評価したいシステムだ。
ただし、当然ではあるが、何も考えずに成り行き任せで進めていて、突然ノーヒントで宝探しをさせられるような気分になるプレイヤーも多いだろうから、賛否はあるだろう。
そういう人にとっては、ゲーム進行のテンポを阻害する障害以外の何物でもない。
今作の反響を受けて、次にどうなるかが、シリーズの今後の方向性という観点からも興味深い。
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ネタバレを避けようとした結果、概念的な話ばかりになり、なんだか「逆転裁判の歩き方」みたいになってしまった。
このゲームをミステリと考えず、ロジックパズルだと思ってやれば、十分面白いと思う。
一般的な水準からすると合格点だが、シリーズの過去作品と比べてしまうとパンチに欠ける感は否定できない。
しかし、地味に味わい深い話ではないかな、と思う。
公式サイトで「新章開廷!!」と言うぐらいなので、当然、次回作も出るだろう。
今作を踏まえて、次にどれくらい完成されたものが出てくるか、それが勝負になると思う。